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連載

現代史の言霊  第86話

6月の調印-米ソ「化学兵器廃棄協定」合意 (1990年)
伊熊幹雄

2025年6月号

我々には酸素が必要だ
ミハイル・ゴルバチョフ
(ソ連大統領)

 日本は世界で唯一、原子爆弾を投下された被爆国だ。さらに国内で化学兵器テロも経験した、数少ない国の一つである。1994年の松本サリン事件、翌95年の地下鉄サリン事件では、神経ガスの化学兵器サリンが使われた。両事件の死者は、治療後の死亡も含めて20人を超えた。

経済政策としての「軍縮」

 イラン・イラク戦争(1980~88年)ではイラクのサダム・フセイン政権がイランおよび自国民に対してマスタードガスやタブン、サリンなどの化学兵器を使った。
 イラク軍による化学兵器攻撃は、30回以上に達した。死者数は2万人にのぼったと推測される。フセインは特に、自国領内にあるクルド人地域(現在のクルド人自治区)で、見せしめのように化学兵器による大量虐殺を行った。
 最近では、ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍による「化学兵器使用」への非難の声が上がっている。新世代兵器「ノビ・・・

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