ASEANは何の為にあるか
平和共存も民主化も「機能不全」に
2025年9月号
東南アジア諸国連合(ASEAN)の基盤が政治・経済両面で大きく揺さぶられている。米中対立、トランプ関税によって怒濤の勢いで製造業の「脱中国」が進む。移転先のASEANは一見、有利にみえるが、脱中国組は中国から原材料を輸入し、組み立てる事業モデル。ASEANが目指す原材料から最終製品までを域内完結させる産業構造は否定されかねない。習近平政権の覇権主義もASEAN各国の政治を変質させ、カンボジア、タイ、フィリピン、ミャンマーなど世襲や軍事独裁が統治の標準となった。民主主義と平和共存を基礎とし、一枚岩で大国に対抗して、多様性を守るASEANの理念と戦略は空洞化が進むばかりだ。
製造業「脱中国」の実情
7月24日、タイ・カンボジア国境のカンボジア領内にあるプレアビヒア寺院遺跡の領有をめぐり、両国の軍隊が衝突。ロケット弾攻撃や戦闘機による爆撃など本格的な交戦によって、双方に多数の死傷者が出た。同寺院をめぐっては2011年にも衝突が起きたが、今回ははるかに規模が大きく、「ASEAN発足以来最大の加盟国間の軍事衝突」(・・・
製造業「脱中国」の実情
7月24日、タイ・カンボジア国境のカンボジア領内にあるプレアビヒア寺院遺跡の領有をめぐり、両国の軍隊が衝突。ロケット弾攻撃や戦闘機による爆撃など本格的な交戦によって、双方に多数の死傷者が出た。同寺院をめぐっては2011年にも衝突が起きたが、今回ははるかに規模が大きく、「ASEAN発足以来最大の加盟国間の軍事衝突」(・・・