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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》「死因究明」の闇

遺体の「真実」が葬られる制度

2025年9月号

 犯罪を題材にしたサスペンスドラマでは、一見事件性のない死体でも検視官や監察医の活躍によって謎が暴かれる。そんなフィクションとは裏腹に、今の日本では誤った死因の判定が行われたり、捜査当局の意向を受けて判断が歪められたりする事例が後を絶たない。国際的には「後進国」と見られるほど問題の多い死因究明制度の実態は、「事実は小説より奇なり」を地でいく驚愕に満ちている。
 2024年の日本での死亡数は160万5298人と、史上最多だった。高齢化社会に付随した現象という側面があるだろう。このうち、病院以外で亡くなった人は20万4184人と、初めて20万人を超えた。
 医療機関で亡くなれば医師が死因を記した「死亡診断書」を作成し、役所が受理すると「死亡」が公式に認定される。病院以外で亡くなると、警察が遺体を「異状死」として扱い、警察の依頼を受けた「警察嘱託医」と呼ばれる医師が「死体検案書」を作成する。自宅で孤独死した場合や、事故で亡くなった時も異状死ということになり、事件に巻き込まれた遺体もそこに含まれる。
 海外から日本の異状死の死因究明制度を「後進国」と揶揄される現状・・・

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