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連載

新・危機管理のノウハウ Vol.08

【スレットマネジメント】自社システムの「脅威」を管理せよ
クマル・リテシュ

2025年11月号

  サイバー攻撃は現代企業の最も深刻な脅威のひとつだ。
 筆者は英国の情報局保安部(MI5)や秘密情報部(MI6)で他国とのサイバー戦の最前線で指揮をとってきた。退任後は、民間に移り、サイバー空間で収集する情報を駆使して、スレットマネジメント、つまり脅威・危険要因を管理するためのセキュリティ対策ソフトを開発してきた。
 その経験を踏まえた観点から言えば、もはや民間企業も世界的な「サイバー戦争」に巻き込まれていると言っても過言ではない。
 今般、飲料大手のアサヒグループホールディングスが、ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃によって甚大な損害を出した。約1カ月後にはオフィス用品通販大手のアスクルも同様の攻撃を受けて受注・出荷を停止するなど、日本企業の脆弱性を露呈している。こうした攻撃は、日本で頻発しているサイバー攻撃の一端に過ぎない。大企業はサイバー攻撃対策に相応の予算をかけるようになったが、それでも大きな被害に遭う。
 組織の規模が大きければ、アタックサーフェス(攻撃の入り口となる領域)も広くなる。アサヒのような大企業は、効率化の・・・

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