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政治

政界混沌「霞が関」を立て直す時

太田 肇 (同志社大学名誉教授)

2025年11月号

 ―政治の世界が混乱する中で、霞が関の官僚機構の重要性は増しますか。

 太田 この間、「政治主導」という言葉がもてはやされて、霞が関の存在感は示されにくい状況が続いてきた。今回は、連立の枠組みが大きく変わった。また多党化の兆しもあって、どんな政党が政権に入るか見通せない時代にも突入しつつある。党によって主張は異なり、世論におもねる動きも顕著になる。世論の反映はもちろん大事だが、一方で長期的な視点で法を遵守し、つつがなく行政を前に進めるために、霞が関の重要性は再認識されるだろう。

 ―しかし近年、国家公務員は就職先としての人気が凋落しています。

 太田 最近は、給与面での待遇を改善したり、労働時間への配慮をして学生にアピールしているようだが、成果を出していない。長時間労働や低賃金というマイナス材料を減らすだけでは人は集まらない。有名な「動機づけ・衛生理論」では、仕事への不満の原因となる「衛生要因」だけを取り除いても効果がないとされている。国家公務員、特にキャリア官僚と言われるようなエリートにとって、労働時間の長さや給料の低・・・

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