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連載

あるコスモポリタンの憂国 連載36

科学・技術・工学の相違と「研究開発」
紺野 大介(清華大学招聘教授)

2010年1月号

 アインシュタインに「相対性」とは? と質問した人に、彼は「可愛い女の子と公園のベンチで過ごす一時間は、一分にしか感じられないもの。ところが、熱いストーブの上に一分間座れと言われたら、まるで一時間にも感じられるはず。それが相対性というものです」と述べた。語彙のイメージや正しい認識は研究開発の促進に効果的である。
 我々が日頃多用している、科学(Science)と技術(Technology)と工学(Engineering)。この三者はどこがどう違うのか?―判然としないまま議論されていることが多い。かなりの識者でも、科学と技術は何となく似たような同義語のように扱っているものが多い。広辞苑によれば、科学とは、「世界と現象の一部を対象領域とする、経験的に論証できる系統的な合理的認識」とある。また技術とは、「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に利用するわざ」。更に工学とは、「基礎科学を工業生産に応用して生産力を向上させるための応用的科学技術の総称」。特に「科学」など、この説明ではどうもピンとこない。合理的認識とは何か?―等と考えるほどに全体が混然となり、混沌とし、し・・・