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経済

《罪深きはこの官僚》針原寿朗(農林水産省総括審議官)

戸別所得補償制度の設計者

2010年2月号

 入省時には「ベビーフェースで天真爛漫」(同期入省官僚)だった針原寿朗・農林水産省総括審議官は、今や「実質的な事務次官」(同)として農水省を掌握し始めた。自民党農林族―農協―農水省の鉄のトライアングルが崩壊する中、その間隙を縫うように民主党、農村両者の思惑を手玉に取る針原は、民主党農政の柱である「戸別所得補償制度」をものの見事に換骨奪胎し、農水官僚主導の制度設計へと手心を加えることで農政の未来を歪めた責任は重い。

 針原による所得補償の具体的な制度設計は、マニフェストにあるような「戸別」の生産費と販売価格の差額を補てんする内容ではなく、「全国平均」の生産費と販売価格の差額を一律の固定価格で補てんする仕組みだ。しかも米価が下落した場合は、その損失分も補てんするきわめて手厚い内容で、「自給率向上」や「農業再生」を謳った当初の理想とはかけ離れた制度である。いわばコメの生産調整への参加を条件にした「農村版定額給付金」だ。実態は減反参加へのメリット対策と転作奨励金の組み合わせだが、これを実施に移すにはこれまでの補助金制度の理解が前提となるのがポイントだ。農水官僚の権限がます・・・