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経済

《企業研究》三井物産

抱える深刻な「構造的問題」

2010年7月号

 米ルイジアナ州沖のメキシコ湾で四月二十日に起きた海底油田からの原油流出事故。海岸に絶え間なく漂着するどす黒い原油が脅威を与えているのはメキシコ湾の生態系だけではない。三井物産の将来にも不安の影を落としている。三井物産が六九・九%を出資する子会社の三井石油開発が事故を起こした油田の権益の一〇%を孫会社を通じて保有しているからだ。油田自体は英石油大手BPがオペレーター(操業者)となっており、最大の六五%の権益を保有しているが、今後予想される巨額賠償の一部が三井石開にも課せられるのではないかとの憶測から三井物産本体への影響が懸念されている。
 石油業界や金融市場では今回のBPの賠償額は「数兆円規模」との分析も流れており、すでにBPは米政府と補償資金として二百億ドル(約一兆八千億円)を出資することで合意している。三井石開や三井物産自身も米国で訴訟を受けており、賠償義務が発生する可能性もある。そうした不安から三井物産株はPBR(株価純資産倍率)が一時、〇・九倍前後まで下げるなど不安定な動きとなっている。
 これはあくまで仮定のリスクであり、今、三井物産の経営が揺らいで・・・