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WORLD

《世界のキーパーソン》ラーム・エマニュエル(米大統領首席補佐官)

オバマの「強面」マネジャー

2010年7月号

 アニメ映画から飛び出したようなキャラクターだ。身長一メートル七十センチそこそこの痩身に、よく動く大きな目。巨人ぞろいの米議会を、クラシック・バレー仕込みのステップで躍動的に歩き回る様子は、強い印象を残す。しかも、頭と舌の回転が並外れて速く、常に周囲を怒鳴り散らし、議論では周囲を圧倒するとなれば、米国の脚本作家が放っておくわけがない。三十代半ばの最初のホワイトハウスでの破天荒な勤務ぶりは、大ヒット米ドラマ「ザ・ホワイトハウス」の主役の原型になった。
 首席補佐官のポストは、日本では理解されにくい。現在のホワイトハウスが、内政・外交の主要政策から各種選挙の総本部まで引き受けている状況では、「首相と同じポスト」(米紙政治記者)と考えるべきだ。
 この職を作ったアイゼンハワー大統領が、軍隊式に「チーフ・オブ・スタッフ」(幕僚長)と呼んだのは暗示的だ。安保から内政の各補佐官、報道官、スピーチ・ライターら全側近を、鉄の規律で束ねるからだ。こんな激務をこなせるのは歴代でも少ない。エマニュエルは就任二年目で、「レーガン時代のジェームズ・ベーカー以来の豪腕」との評価を確立し、「大統・・・