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南シナ海も波高し

海洋資源「簒奪」目論む中国

2010年9月号特別リポート

 史記の故事にいう夜郎自大と言うべきだろう。二〇〇二年七月の東南アジア諸国連合(ASEAN)第三十五回定例外相会議で、主に中国によって引っ掻き回されていた南シナ海の秩序を正すための南シナ海行動基準・行動宣言が作成されたはずだ。ところが、とりあえず落ち着いたはずのこの海域で中国が数年前から強力な海軍力を背景に、他国の主権を無視し、あたかも自国の海のような行動を取り始めたのである。
 目を付けているのは南シナ海に存在する石油、天然ガスなどの資源だ。領有権の主張で真正面からぶつかるベトナム、台湾のほかブルネイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイが直接、間接関わりを持つ。ヒラリー・クリントン米国務長官は去る七月二十三日にハノイで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)で中国の行動をあからさまに批判し、これに対して楊潔匐外相はこの問題を国際化してはいけないと反論した。
 中国の動向を毎年議会に報告している米国防総省は八月十六日に「中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」を公表し、中国指導部が南シナ海での国益を「中核的利益」(core intere・・・