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経済

東京メトロが怯える「石原構想」

迫られる「お荷物」都営との統合

2010年9月号

 暗雲――東京メトロ(正式名・東京地下鉄)の掲げる早期上場・民営化計画の行方に黄信号が点りはじめた。国と二分する大株主の東京都が、都営地下鉄との経営統合優先を訴え、このところ「IPO妨害工作」(金融関係者)に一段と拍車をかけているためだ。
 連結売上高三千七百七十六億円、純利益三百八十五億円。二〇一〇年三月期、メトロは純・民鉄最大手、東京急行電鉄の三分の一にも満たない年商規模ながら、その三倍近い期間利益をたたき出した。メトロの優等生ぶりを何より雄弁に物語るのは、本業の収益力だ。絶対額ではJR西日本を凌ぐ営業利益八百五十三億円をあげ、売上高営業利益率は実に二二・六%。JR東日本はおろか、東海道新幹線という超ドル箱路線を抱えるJR東海さえ上回る。「鉄道界最強の収益体質」(私鉄関係者)だ。
 そんな余勢を駆る形で今年三月策定したのが一一年三月期から三年間の中期経営計画「FORWARD TOKYO METRO PLAN 2012」。一三年三月期でROE七・〇%(一〇年三月期六・六%)を目指すとともに、リーマンショックによる相場低迷などで一時棚上げしていた株式上場への再・・・