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連載

新・不養生のすすめ 第23話

日本で認知症が減らない理由
大西 睦子

2019年2月号

 米国で認知症の有病率が減っている。有病率とは、ある時点の、ある人口集団で、ある病気をもつ人の割合を示す。例えば、人口十万人あたりの認知症患者の割合を意味する。
 このニュースを知ったのは、三年ほど前に、ボストン大学の研究者らの論文を目にしたときだ。舞台は、私の自宅から車で二十分くらいの場所に位置するマサチューセッツ州フラミンガム。特にメジャーな産業はなく、中流階級の白人が住むボストンのベッドタウンだ。ありふれた街だが、住民の協力により、「フラミンガム心臓研究」という、世界的に有名な疫学研究が七十年以上も続いている。
 研究者らは、六十歳以上の約五千二百人の参加者における認知症の有病率を調査した。そして(一)一九七七〜八三年、(二)八六〜九一年、(三)九二〜九八年、(四)二〇〇四〜〇八年の四つの期間にわけて、認知症の有病率を比べた。すると(一)と比べて(二)~(四)の三つのグループでは、それぞれ二二%、三八%、四四%も認知症の有病率が減っていた。また認知症の平均発症年齢は、一九七〇年代後半は八十歳だったが、最近は八十五歳にまで上がった。
 この研究で、なぜ・・・