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社会・文化

がん検査・治療に「新時代」到来

不治の病「克服」に大きく前進

2019年2月号

 かつて不治の病とされたがんの治療は今や、パラダイムシフトとも呼ぶべき劇的な変容を遂げている。きっかけは「リキッドバイオプシー」という名の検査法、そして「ネオアンチゲン免疫療法」の開発だ。前者は採血などで検体を採取して、がんのゲノムを分析する。がんの診断で、手術や生検といった侵襲的な処置を必要としない。後者は、がん抗原に対応したペプチドやリンパ球を投与する。治療の時間が五~十分程度で、働きながら、外来や在宅で治療できる。ところが、日本ではいずれの療法も普及することなく、研究も他の主要国の後塵を拝している。日本のメディアが報じないがん治療の最前線に迫る。
 リキッドバイオプシーは、直訳すると「液体生検」だ。従来、外科的に切除した検体を用いて病理診断していたが、これは血液、唾液、尿など液体を用いたがん診断を意味する。
 四十年ほど前から、がん患者の血液中にはがん細胞から放出されたDNAが循環していることが知られていた。しかし、血液中に存在するDNAはごく微量で、従来の技術では検出できなかった。それを可能にしたのが、近年のゲノム研究の進歩だ。
 最新の技術では、・・・