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新年中東の「危機のシナリオ」

イランの核に脅える湾岸諸国

2011年1月号

 二〇一一年は言うまでもなく、9・11事件から十周年、米国主導の対テロ戦争開始から十年という節目の年に当たる。
 十年ひと昔、と言われるが、中東世界のキーワードは「十年ごとに危機は起きる」だ。
 一九七三年の第四次中東戦争とこれに端を発した石油危機、八〇年のイラン・イラク戦争勃発、九〇年のイラク軍クウェート侵攻とこれに伴う湾岸戦争、そして二〇〇一年の大規模テロ、といった具合に、中東をめぐっては、ほぼ十年サイクルで危機が繰り返されていることがよくわかる。

イランには「実力行使」しかない


 このような現象が起こる理由として、中東地域内の国と国の関係がそもそも複雑だから、とか、民主的な政権がないから、及び、エネルギー資源が集中しているから、といったことが指摘される。それぞれ、十分な説得力を有する要素であるが、最も重要である(と、少なくとも域内の人々が考えている)ことは、米国が定期的、反復的な戦争を必要とする好戦的な国家体制だということだろう。
 超大国アメリカの対外政策を・・・