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経済

中国経済を襲う「悪性インフレ」

金融政策「打つ手なし」の迷宮

2011年1月号

 日本の金融関係者が最近、国際会議の場で聞いたジョークを紹介する。
「周小川・中国人民銀行総裁が乗っていた車が大事故を起こし、乗っていた全員が天国に召された。天国の入り口で神様が総裁に尋ねた。次の人生もまた今の仕事を選ぶか? 総裁は慌てて首を横に振り、傍らにいた運転手を指し、彼と代わりたいと答えた。不思議に思った神様が理由を聞くと、総裁は一言、『今度は自分でハンドルを握りたい』」
 わかりにくいかもしれないが、周氏が中央銀行総裁でありながら、さまざまな圧力を受け金融政策の舵取りを自由にできない状況を揶揄したものだ。
 実際、周総裁の苦境は傍目にも明らかだ。中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は二〇一〇年十月の前年同月比四・四%の上昇から十一月には五・一%まで高進した。五%台に達したのは二年四カ月ぶりだ。中でも国民生活に最も影響の大きい食料品は一一・七%の上昇となり、国民の懐を直撃している。にもかかわらず、中央銀行である人民銀行は預金準備率の引き上げという中途半端な対応を小出しに打ち出すだけだ。世界の市場関係者が予想していた、十月の政策金利の〇・二五%・・・