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政治

《罪深きはこの官僚》 吉田大輔(文部科学省高等教育局長)

「大学発ベンチャー」で税金を浪費

2015年6月号

「世の中には商売には向いていない人種がいる。最右翼は官僚と学者。一握りの例外を除いて彼らにカネを渡しても無駄だ」

 バイオやネット系の起業家に資金を提供する独立系ベンチャーキャピタル(VC)の関係者はこう語る。制度設計のみに長けた官僚や、営利活動とは縁遠い学者が起業しても「武士の商法」になるのが関の山なのだ。

 しかし今、官僚が絵を描き学者に商売をさせるという愚かな事業に一千億円以上の税金が投入された上、中途半端な制度設計で宙に浮いている。

 問題になっているのは、二〇一三年一月に閣議決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の一環として創設された「官民イノベーションプログラム」。東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学の四大学に合計一千億円を出資して、大学発ベンチャーを生み出そうというものだ。

 各大学は学内に基金を作り、そこから有望な研究をビジネス化するための融資を行うというが、問題は山積みだ。最も危険なのは、融資をする側と受ける側がどちらも同じ大学の人間ということ。外部有識者は入れるものの、・・・