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連載

皇室の風31

五節舞と天武の呪縛
岩井克己

2011年3月号

 大嘗祭の直会「豊明節会」では、華麗な舞楽が演じられる。
 まず武人たちによる剣の舞い「久米舞」。その後には、大嘗祭で天皇が神に捧げた新米を献上した悠紀・主基両地方の風土風俗を映す「風俗舞」が披露される。そして最後は、乙女たちの艶やかな「五節舞」で締めくくられる。
「五節」の名の由来は、節会に農耕の繁栄を祝った「五節田舞」から来たとも、中国の晋王が五つの音律の楽で民衆を教化したとの「春秋左氏伝」の記述から来たともいわれているようだ。
 古くから大嘗祭や新嘗祭で演じられた。「をとめども」で始まる「大歌」とともに、四、五人の舞姫が、緋色に白ともえぎ色の唐花や尾長鶏をあしらった唐衣の下に青と紫の袍、濃色の長袴を着て、四方に日蔭糸を垂れ、大垂髪の髪に金銀色の梅花や金蒔絵の櫛を飾り、扇をかざして舞う。
 もともと舞姫には貴族の令嬢が選ばれ、天皇の目にとまったら後宮に仕えさせるためのお披露目の意味もあったとされる。僧正遍昭がその美しさを「をとめの姿しばしとどめむ」と詠んだことで有名だ。
 平成の大嘗祭の宴「大饗」でも、宮殿の豊明殿で舞われた。五人の・・・