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政治

安倍政権は日本の民主主義を食い尽くした

坂野潤治(東京大学名誉教授)

2020年7月号

―河井克行、案里夫妻が公職選挙法違反容疑で逮捕されました。

 坂野 目を疑った。選挙制度の透明性はとっくの昔に確保されている。なぜこんなことが、よりによって今の世の中に出てくるのか。明治、大正、昭和の時代でも、封筒で現金を配るということはなかった。仮にカネを渡すのでも、もっと巧妙な手段があった。
 日本の政治家は本来、地方の選挙地盤と深くつながっている。一回限り、ポンと封筒に入ったカネを渡して、票を買おうという、こんな単純な社会は、日本にはなかった。この行為には倫理性のかけらもない。政治家が根無し草になったということだ。政治のどこかが狂っている。

 ―安倍晋三政権のどこが間違っているのですか?

 坂野 戦前と戦後の成果をすべて食い尽くしてしまったね。日本の民主主義は、第二次世界大戦後だけのものではなく、明治、大正、昭和と、戦前から長い伝統を持っている。
 安倍首相は「保守」を自任しているが、保守とは、いま日本の目前にある良き伝統を守る・・・