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連載

続・不養生のすすめ8 

飲酒の功徳
柴田 博

2011年8月号

 ビールがうまい季節だ。暑さで参った体には、冷えたジョッキが何よりの慰め、という人は少なくないだろう。
「酒は百薬の長」という。酒飲みの願望が込められた言い回しではあるが、それを差し引いても、酒には諸々効能がある。国内外のデータをみても、だいたい二合くらいまでの飲酒は長生きに役立つとするのが一般的だ。問題は、二合で済むかどうか。量次第で、薬にも毒にもなるのが、アルコールという物質の悩ましいところである。
 かつて東京都小金井市に住む七十歳の男女四百二十二人を対象に、一九七六年から十年追跡した酒と寿命に関する調査は、飲酒の功罪を考えさせられる結果となった。飲酒習慣のある人、飲酒習慣のない人、酒をやめた人の三グループに分けて、その後の寿命を調べたところ、一番早死にするのが酒をやめた人たちだった。何らかの病気が原因で断酒した人も一部にいることを考慮する必要があろう。それを除いて、この調査で顕著だったのは、飲む人とやめた人のライフスタイルの差異であった。
 まず、飲む人は体をよく動かす傾向がみられた。スポーツの習慣をもっていて、さらには人との付き合いも多い。ゴルフ・・・