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社会・文化

「ジリ貧」の出版取次業界

日本式書籍流通の曲がり角

2011年9月号

 出版取次業界の二強である、日本出版販売とトーハンの二〇一一年三月期の決算をみると、ともに売上高を減らしている。日販は前年を百十億円あまり下回る六千二十億円、トーハンは約二百七十八億円減の五千百九十四億円だった。両者の差は八百二十六億円となり、トーハン売上高の約一六%に上る。一九九七年に、日販がトーハンの売上高を抜き業界一位に躍り出て以降、この差は一進一退こそあるものの、開く傾向が続いている。  減収傾向が止まらない両者ではあるが、ともに前年度並みの営業利益(日販百四十億円、トーハン六十億円)を確保した。これは、両者の取引先に皺寄せがあることを示唆する。書籍流通に詳しい業界関係者はこう語る。 「経費削減努力もあるが、中小零細の書店や出版社にツケを回していることは拭い難い事実だ」  こうした一般的な事象では、両者の間に特に差はない。

誰も逆らえぬ「相談役」

 ではなぜ、トーハンはここまで水を開けられたのか。  業界内で指摘されるのは、チェーン店への納入出遅れだ。特に近年、日販の売り上げを語る上で、避けて通れないのがTSUTAYA(以下ツタヤ)・・・