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連載

日本の科学アラカルト14

応用への期待も高まる「ナノマテリアル」分野

2011年10月号

 


 材料科学(工学)において、日本は世界でも指折りの先端研究国である。古くは「冶金」にはじまり、基礎研究はもちろん応用、つまり実際の素材の実用化についても、トップレベルを維持してきた。  

 そのことを端的に示すのは、この国の製造業の発展だ。国内経済の柱ともいえる各種輸出製造業の土台となるのが「材料」であることは明らかだろう。つまり、材料科学におけるアドバンテージは、現在ばかりでなく、将来におけるこの国の国際競争力の原動力となりうる。  

 現在の材料科学の舞台は、「ナノ( 10-9)メートル」の領域にある。そもそもナノテクノロジーの一番有名な代表例、「フラーレン」の存在を提唱したのは日本人だ。炭素原子六十個からなる、サッカーボール状の極めて美しいこの物質を一九八五年に初めて発見したのは、米英の化学者らで、この功績によりノーベル賞を受賞している。彼らの発見より遡ること十年以上前の七〇年、当時豊橋技術科学大学にいた大澤映二氏がこの存在を指摘していた。  

 さらにいえば、フラーレ・・・