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プーチン「個人蓄財疑惑」の窮地

汚職まみれ「錬金術」のカラクリ

2012年1月号

 権力掌握後最大の抗議デモに直面しているプーチン首相に対して、個人蓄財疑惑が急浮上している。国家保安委員会(KGB)出身のプーチン首相は、この種の疑惑を封じ込めてきたが、側近のビジネス拡大と、関連企業の不明朗取引の表面化で、首相周辺の貪欲ぶりが明るみに出始めた。国民の間には、長期政権と腐敗蔓延に怒りが強まっているだけに、最高指導部をめぐるカネの疑惑は、今や政権のアキレス腱だ。

極上の利権を好き放題に

 首相が一人で全ロシアの視聴者と向き合う、恒例の年末テレビ会見。首相は十二月十五日のマラソン会見で、大統領職への意欲をなおむき出しにした。会見を見ていた西側外交筋は、「彼が長期政権にこだわるのは、政権を去ったとたんに刑事訴追されたくないからだ。自己保身とカネが彼の目的」と語った。過去十年間、隠し続けた「プーチン利権」こそ、この政権の存在意義だ、と言うのだ。  利権構造の謎を解く一端は、「ロシア銀行」という、無名の地方銀行の元幹部によって最近、アメリカにもたらされた。元幹部は東西冷戦期のスパイさながらに、銀行書類を鞄に詰め込み、夜陰にまぎれ出国した。彼が明らか・・・