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WORLD

勃興する「インド洋経済圏」

「二十五億人」市場の胎動

2012年4月号

 二十一世紀に入ってからの十年間、世界経済は中国の驚異的な需要膨張に牽引されてきた。だが、今、中国経済は競争力の低下、経済格差や既得権益の肥大化など深刻な問題を抱え、高成長期が終焉しつつある。そうしたなかで、「ポスト中国」を探すグローバル企業の目は当然のようにインドに向けられている。ただ、ここでインド一国だけを見れば、グローバル経済の新たな胎動を見逃すことになるだろう。注目すべきはインドを核にインド洋沿岸地域に形成されつつある「インド洋経済圏」なのだ。 「インド洋経済圏」は経済やビジネスの用語としてまだ定着していない。地理的概念で言えば、インドを真ん中に、東はオーストラリアから東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部を包含して北上し、西はイラン、サウジアラビアなど中東諸国、さらにケニア、モザンビークなど東アフリカを南下して、南アフリカ共和国に至るインド洋を取り囲む地域だ。  こう言えば、環太平洋経済連携協定(TPP)で注目される「環太平洋」の亜流のようにみられかねないが、意味は大きく異なる。「環太平洋」は米国、中国、日本という世界の三大経済大国とASEANを中心に主として貿易・・・