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経済

《クローズ・アップ》鈴木 修(スズキ会長兼社長)

「米国撤退」という勇気ある決断

2012年12月号

「自分たちのできることをして、それでも駄目なら撤退という割り切った心構えが経営者には不可欠だ」――かつてそう語ったスズキの鈴木修会長兼社長は、二〇一二年十一月六日、ハワイを除く米国自動車市場からの撤退を発表した。

「おれは娘婿だから社長になれたんじゃない。自分の手で社長の座を奪い取ったんだ」と公言する鈴木氏だが、そのきっかけとなったのが一九六六年の米国スズキ社長の就任だった。米国スズキへの出向は体のいい厄介払い。だが、鈴木氏はこの地で「必ず社長に上り詰めてやる」と闘志を燃やしたという。そんな深い思い入れのある米国自動車市場が堅調に回復しつつあるこの時期に、鈴木氏はあえて撤退を決めた。

「(鈴木)修さんは引き際の魔術師。今回の決断も、数年後に正しかったことが証明されるだろう」と、鈴木氏をよく知る専門紙記者は話す。鈴木氏は七九年に地元の倉庫業界が二輪車の保管で大儲けしているという情報から、ホンダとヤマハ発動機による乱売合戦――いわゆる「HY戦争」をいち早く察知。自社の二輪車在庫を大幅に圧縮して、乱売合戦に巻き込まれることなく切り抜けた。〇七~〇八・・・