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連載

日本の科学アラカルト28

微小世界に挑むマイクロデバイス技術

2012年12月号

 科学・技術の開発過程において「より○○」という貪欲さは必要不可欠だ。より速く、より強く、より正確に。ストイックなまでにそれを追い求める過程は、スポーツ選手のものとも重なる。知的アスリートによる切磋琢磨が日夜続けられている。

 古くからの科学探求で、人間はあらゆる方向を目指してきたが、その一つが微小世界だ。より小さいものを見るために顕微鏡が作られ、光学の限界を超える電子顕微鏡などの機器を生みだしてきた。原子物理学などもより小さいものを探求する営みの一つだろう。物質が、分子から構成されるという仮説から、その分子を作る原子を発見した。電子、中性子、陽子、さらにそれを構成するクォークに辿りついている。

 二〇〇〇年代に入りもてはやされた「ナノテクノロジー」なる分野もまた微小な世界への欲求の一つだ。あらゆる機器の小型化は、商業ベースでの要求であり、それを構成するデバイスの小型化が求められる。

 その一つの終着点として、研究開発がすすめられているのが、体内で活動できるマイクロマシンだ。体内の微細な管や隙間を走り、疾患部分を見つけ、・・・