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中国経済は好転しない

歪んだ「国家資本主義」の限界

2013年1月号

 年も押し迫った十二月二十六日、北京と広東省広州を結ぶ高速鉄道が、残されていた北京―河南省鄭州間の完成によって全線開通した。全長二千二百九十八キロを時速三百キロの自称、中国版新幹線が八時間で結ぶ「世界最長の高速鉄道」(中国鉄道部)だ。一見、華々しい巨大プロジェクトの完成だが、実際は内陸部を延々と走る路線で、しかも北京と香港の九龍を結ぶ在来線の「京九線」が並行しており、誰がみても採算性は薄い。京九線は一九九六年に完成以来、まだ十六年しかたっておらず、典型的な重複投資でもある。  にもかかわらず、急ぎ完成させた背景には中国全土の鉄道の建設、運営を一手に担う鉄道部(鉄道省)の強い意向があったといわれる。鉄道部は官庁であり、政策立案、規制などを担うが、同時に鉄道事業の現業も抱える奇妙な組織だ。例えて言えば、国土交通省がJR全社と日本中の私鉄を抱え込み、自ら監督、規制しながら鉄道を日々、運行しているようなものだ。  鉄道部は二〇一一年七月に浙江省温州で起こした高速鉄道事故で激烈な批判を国内外から浴びた。進めていた高速鉄道の建設計画は一時すべて停止されただけでなく、信用不安から建設資金・・・