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社会・文化

ワイン評論界に「異変」あり

帝王ロバート・パーカーの新たな挑戦

2013年5月号

 ワインの帝王と呼ばれるロバート・パーカー。世界の市場価格を左右する米国の評論家が率いるニュースレター『ワイン・アドヴォケイト』が、地殻変動に揺れている。シンガポールの実業家に売却されて、体制が変わり、内紛も起きた。「神の舌を持つ男」と言われる六十五歳の影響力が、衰えてきたのだろうか。  絵画、美術品、美食……あらゆる分野に、評論家はいるが、パーカーほど大きな影響力を持つ存在は史上初めてだ。百点方式でワインを採点する。そのパーカー・ポイントが九十五点を超せば、争奪戦が起き、プレミアムがついて値上がりする。八十五点をつけようものなら、売れ行きは鈍る。英国王立経済会議は「パーカー・ポイントの存在は、ボルドーワインの価格を一五%押し上げる効果がある」と、かつて発表した。 「消費者のため」という大前提  ニュースレターの創刊は一九七八年。メリーランド州ボルティモアの信用金庫の顧問弁護士だったパーカーが、六百部の見本誌を、ワインショップの顧客に送るところから始まった。それから五年。ボルドー一九八二年のプリムール(先物取引)試飲会で、ヴィンテージの卓越した品質を見抜・・・