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WORLD

《世界のキーパーソン》ハマド・ビン・ハリファ・アル=サーニ (カタール首長)

シリア民主化を支援する「専制首長」

2013年6月号

 内戦が続くシリア情勢、サッカーW杯開催(二〇二二年)、巨大資源企業買収への介入。湾岸産油国カタールは、今や国際ニュースに欠かせない。人口約二百万(大半は外国人労働者)の小国は、天然ガス資源の富の力で、国際社会に特異な地位を築いてきた。

 その推進役がハマド現首長。英サンドハースト陸軍士官学校に留学した後、国防相を務めた。一九九五年に父親ハリファがスイスに旅行中、自らの首長即位を一方的に宣言し、政権を奪った。カタールを支配するサーニ家は元来、流血の内部抗争が頻繁に起きたことから、「湾岸のゴロツキ」と揶揄された。ハマドに追われたハリファ自身もクーデターで政権を掌握した。一家の伝統は脈々と続いている。

 即位後に着手したのが、暗殺やクーデターに対し万全の配慮をすることと、「世界に知られ、認知される」ことだった。九六年にイスラム圏に向けた、アラビア語衛星ニューステレビ「アルジャジーラ」を創設。同局は欧米の手法も取り入れ、事実報道で視聴者をつかみ、官製情報ばかりのアラブ世界に革命的変化をもたらした。ハマド自身もマスコミ好きで、しばしば同局の電波を延々・・・