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政治

安倍の危うい「独りよがり外交」

中韓との「関係改善」機運を潰す

2013年8月号

 総理大臣官邸から外務省に、総理大臣安倍晋三の外遊を巡る要望が伝えられたのは、通常国会が閉会し、参議院議員選挙に向けて各党が走り出した頃のことだ。  一つは、選挙後の安倍の外遊日程の保秘である。選挙が終わらないうちからメディアが報じれば、選挙での与党勝利は間違いないと高を括った安倍の「驕り」だと思われて、選挙にマイナスになると考えたようだが、七月下旬のフィリピン、マレーシア、シンガポール歴訪予定は、六月末にはメディアが知るところとなり、内閣官房長官菅義偉を激怒させた。もっとも、メディアが競って「外交ラッシュ」と報じるのを、安倍自身は喜んでいたとも言われる。  もう一つ、安倍と官邸とのズレを露呈したのは、「総理の外遊を、新聞やテレビに『中国包囲網』と書かせるな」という注文だった。七月下旬の三カ国歴訪で、安倍は第二次政権発足後七カ月でASEAN(東南アジア諸国連合)十カ国のうち七カ国を訪れたことになる。いずれも二国間の懸案は少ないため、メディアは異例の頻度に着目し、「中国包囲網」だと伝え、これまた官邸を苛立たせた。 過去の「成功体験」にしがみつく ・・・