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政治

《政界スキャン》

永田町最後の「彦左衛門」

2013年6月号

 かつてはどこの世界にもいた「立志伝中の人物」や「叩き上げの職人」の姿をめっきり見なくなった。政界も同じだ。肩が凝るほどの学歴、経歴を売りにし、流暢な英語を操る政治家は山ほどいても、ここ一番では腰砕け。そんな光景を嫌ほど見せられてきただけに官房長官菅義偉の存在は一層異彩を放つ。言葉は短いが歯切れの良さは群を抜く。

 五月十六日午後の記者会見は秀逸だった。内閣官房参与の飯島勲の電撃訪朝をめぐって韓国政府が懸念を表明した。菅はバッサリ切り捨てた。

「言っている意味が分からない」

 たったこれだけのフレーズだが、百万言を費やすよりはるかに訴求力があった。今や安倍晋三政権は菅が一人で支えていると言っても過言ではない。



 菅は昭和二十三年生まれの団塊の世代。秋田県南部、雄勝郡雄勝町(現湯沢市)のイチゴ農家で育つ。地元の高校を卒業と同時に集団就職で上京。段ボール工場で働きながら法政大学法学部(夜間部)で学んだ。おそらくこの時期が菅にとって人生最大の試練の時期だったのかもしれない。そんな・・・