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連載

日本の科学アラカルト37

「はやぶさ」を支えた力 次世代の独自宇宙技術

2013年9月号

 八月二十七日、イプシロンロケット試験機の打ち上げは直前で中止になった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から打ち上げられる予定だったイプシロンは、従来の液体燃料ではなく固体燃料を使い、液体燃料機よりも低いコストで衛星を軌道上に送り込むことを目標としている。

 三年前の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還とそれに続くフィーバーは記憶に新しい。米国やロシアに依存した有人宇宙飛行とは別に、日本独自の宇宙開発は着実に進化し続けてきた。軌道上や惑星に人間を送り込むことについては、その膨大なコストに対するメリットについて議論がある。一方で、宇宙空間に挑むことはその成り立ちを知るうえで欠かせない。

 二〇一四年には、はやぶさの後継機となる「はやぶさ2」の打ち上げが予定されている。同機の推進システムにも採用され、一号機で不具合が生じドラマチックな帰還を期せずして演出したのが「イオンエンジン」だ。

 宇宙空間を物体が移動するための「動力」はいくつも存在する。原理的には基本的にすべて高校の物理レベルの「作用・反作・・・