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連載

日本の科学アラカルト 38

日本生まれのカーボンナノチューブ 応用・実用研究が進む

2013年10月号


 今年も十月七日の「医学・生理学賞」を皮切りにノーベル賞の発表が始まる。昨年、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が同賞を受賞したが、今年も日本人受賞者が出るかどうか注目されている。

 トムソン・ロイター引用栄誉賞は「ノーベル賞受賞候補」といわれ、受賞者を予測する上の指標にされることが多い。日本人は過去のものを含めて二十人以上が既に候補者として並んでおり、化学、物理学賞も含め今年も受賞者が出ておかしくはない。

 革新的発見であることはノーベル賞受賞の条件の一つに過ぎない。その発見の応用研究が進み、社会で実用化されていると受賞の可能性が高まるといわれている。

 長年候補に挙げられている日本の研究者のなかでも、有力といわれる一人が名城大学大学院理工学研究科の飯島澄男教授だ。同教授は日本の電子顕微鏡研究の第一人者であると同時に、カーボンナノチューブ(CNT)の発見者として知られている。炭素原子からなる六角形構造(六員環)で形成された筒状のCNTは一九九一年に飯島教授が発見し、その応用研究が日本国内で続けられて・・・