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社会・文化

朽ち果てる日本の美術

展覧会「乱発」が名宝を殺す

2014年1月号

 平安時代の仏教絵画、室町時代の水墨画、桃山時代の金碧障壁画、江戸時代の浮世絵……二〇一四年も、日本美術作品を展示する展覧会は百花繚乱である。古美術の世界では、陶磁器や金工品のような丈夫な工芸作品は比較的長い期間展示されるが、絵画や染織、漆工になると、長くてせいぜい一カ月間、厳しい場合は一~二週間というような短期間に限られる場合が少なくない。「借りてくる作品ならまだしも、美術館が所蔵する絵画なら、いつ行っても見られなければおかしい」という声も聞くが、この道理が通るのは、絵画でいえば油絵のような頑丈な作品の場合で、日本の繊細・脆弱な絵画はそうはいかない。油絵は空気に触れても油層で守られた絵具が壊れることはないが、紙や絹の絵画は、触れれば絵具は手に付くし、空気に晒されていること自体が作品の劣化を進めるからである。  この世のあらゆる物質は、いつかは壊れ、分解して、塵と化す―これがモノの運命である。美術品も例外ではない。だからモノを一日でもいい状態で長生きさせるために、虫や塵の心配のない収蔵庫で、温湿度を最適に保ち、光を当てずしまっておくことになるのだが、しかしそれを公共に見せる機・・・