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社会・文化

日本の科学アラカルト 162

「冷やす技術」のフロンティア 固体冷媒が秘める可能性

2024年2月号

 温暖化と言うか、気候変動と呼ぶかは立場によって変わるが、地球上のありとあらゆる場所での気温の上昇は動かし難い事実だ。氷河は解け、干ばつや山火事の被害も拡大の一途を辿っている。
 そうした中、エアコンの市場規模は拡大し続けている。かつて欧州ではエアコンが売れなかったが、近年の度重なる熱波、猛暑の影響で売れ行きが伸びた。
 調査によって数字は変動するが、人類がつくり出す電力のうち、2~3割が冷却(エアコンや冷蔵庫)のために使われているという試算もある。
 エアコンの原理は小中学生でも理解できる。冷房として使用する際には、冷えた「ガス」を室内機に通して部屋の空気を冷やし、屋内の熱を、ガスを介して室外機側に運ぶ。その後ガスを圧縮し熱交換器を使って熱を外気中に捨てる。そのガスを膨張させると冷たくなり、再び室内機へ戻るというサイクルだ。ここでガスは熱を運搬する役割を果たしており、圧縮と膨張の過程で熱を放出したり、吸収したりする。冷やすために介在するので「冷媒」と呼ぶ。暖房に使う際には「熱媒」と称することもあるが、要は熱を移動させるための媒体である。
 かつ・・・