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経済

中国で始まるトヨタの「凋落」

ハイブリッド「的外れ戦略」で自滅へ

2014年9月号

 二〇一四年七月三十日、トヨタ自動車は中国・江蘇省の常熟高新技術産業開発区に「トヨタ自動車(常熟)部品有限(TMCAP)」を開業、ハイブリッド車(HV)用ユニットの本格生産を開始した。トヨタにとって「虎の子」であるHVの中国生産を巡っては、技術流出を懸念する声など社内でも水面下の慎重論が絶えなかったと伝わるが、豊田章男社長の「鶴の一声」で異論は封殺された格好だ。なぜ、章男社長はHV技術が盗まれるリスクを負ってまで中国生産に乗り出したのか。そこにはトヨタが抱える「HV戦争」と「世界一死守」という二つの呪縛がある。 HV技術は見向きもされていない 「HV技術を中心とした研究開発を進めているトヨタ自動車研究開発センター(TMEC、江蘇省常熟高新技術産業開発区)と連携しながら、時代が求め、中国の顧客が求める環境ユニットの開発・生産を進めていく」―。TMCAP董事長を兼務する須藤誠一トヨタ副社長は開業式典で高らかにこう宣言した。TMCAPでは現在、「カローラ」や「レビン」など新型小型車用の無段変速機(CVT)を生産しているが、一五年までにHV用変速機も手がける。 ・・・