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経済

三菱電機「モラル喪失」の100年

「不祥事濫造企業」は治らない

2021年8月号

 社会規範及び法令を遵守し、高い倫理観を持ち行動する―。
 今年一月、創立百周年を迎えた三菱電機がグループとして改定した企業理念体系の「倫理・遵法」の項目に掲げたスローガンである。この他にも「社会・顧客・株主・取引先、及び共に働く従業員との信頼関係を大切にする」といった言葉が並んでいるが、今となっては空虚に響く。否、今回発覚した不正だけでなく、百周年を迎える以前に三菱電機は“不祥事のデパート”と化していた。それを考えれば、よくもこんな企業理念を堂々と発表できたものである。
 七月五日の昼前、東京・大手町の経団連会館で定例会見を控えていた十倉雅和会長(住友化学会長)を、三菱電機会長の柵山正樹氏が訪ねた。目的は活動自粛の申し入れ。柵山氏は十倉氏に長崎製作所で発覚した空調機器などの検査不正について「申し訳ない」と謝罪した上で、九月末に調査結果が出るまでの間、定例会議への出席や、宇宙開発利用推進委員会などでの活動を控えると伝えたのだ。十倉氏はその後の記者会見で「(柵山氏から)経団連副会長辞任に関する発言はなかったか」と問われ、こう答えた。
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