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連載

日本の科学アラカルト 50

「無尽蔵」に資源が眠る 海水からのレアメタル回収技術

2014年10月号

 この夏、政府はこれまで名前のなかった百五十八の無人島に名称をつけて公表した。島の領有実績を内外にアピールするとともに、広大な領海と排他的経済水域(EEZ)を確保することが目的だ。中国との間で火種となっている尖閣諸島問題が発端ではあるが、海洋資源を確保するためには当然のことといえる。  海洋資源といえば、日中境界付近にあるガス田のほか、近海に大量に眠る「燃える氷」、メタンハイドレートが広く知られている。また、洋上風力発電や、潮力発電などの研究が進んで、資源小国、海洋大国と期待が集まっている。  見落とされがちな重要な海洋資源が「海水」だ。海に行けば大量にある塩辛いこの水も、資源という観点から見ると重要な可能性を秘めている。地球上の水分の九七%を占める海水は十三億五千万立方メートルという膨大な量が存在する。塩分濃度は海域によって多少の変化はあるが平均して三・五%だ。  一言で「塩分」といっても塩化ナトリウムはそのうち七八%で、他にも多種多様の物質が溶け込んでいる。中には日本が輸入に頼っている希少金属もあり、有効な回収方法が確立されることが期待されている。  今年二・・・