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連載

日本の科学アラカルト 53

宇宙誕生の謎に迫る 「重力波」を観測する取り組み

2015年1月号

 二〇一四年一月に発表され、日本の科学界を悪い意味で揺るがしたSTAP細胞問題は、十二月の理化学研究所による「再現不可能」という報告で一区切りとなった。  実は一四年には、物理の分野でも「ノーベル賞級の発見」と報道されながら、その後疑義がついている研究がある。三月に米ハーバード大学などのチームが「重力波」の発見に成功したと発表し、日本でも新聞各紙がこれを報じた。アインシュタインの一般相対性理論により存在が予測される物理現象だが、世界中の研究者が挑戦しながらこれまで観測されたことはなかった。しかし、その後複数の研究者らから観測結果に疑義が訴えられ、こちらはまだ結論が出ていない。念のために言えば、この研究では、「捏造」が疑われているわけではない。  直近、日本人がノーベル賞を受けた「iPS細胞」や「青色発光ダイオード(LED)」のような技術は一般人にも理解しやすく、発見や開発に向けたドラマも想像しやすい。一方で、一三年に物理学賞を受賞した「ヒッグス粒子の観測」は日本も大いに研究に関与したと報道されたが難解だ。  意地悪く言えば、「あらかじめ存在がわかっているものを観測する・・・