三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

《世界のキーパーソン》戴秉国(中国国務委員)

対日強硬路線のシナリオ描く

2010年10月号

 尖閣諸島で違法操業し、日本の巡視船と衝突、逮捕された中国人船長について那覇地検は処分保留のまま釈放し、中国政府はただちにチャーター機で迎えを出した。その対応をめぐって日中関係は再び冷却化し、双方の世論は反中、反日の気運に大きく傾いている。歴史認識、靖国参拝などに続く日中関係の新たな火種となったこの問題を、中国側で取り仕切ったのが外務担当の国務委員・戴秉国(六十九歳)だ。
「国務委員」は日本ではあまり聞き慣れない肩書だが、外相など一般閣僚よりも格上で副首相級のポスト。戴秉国の前任者は唐家模元外相であり、女性閣僚として日本でもよく知られた呉儀氏も国務委員から副首相に就任した。中国の外交政策の基本を立案し、国家主席、首相に提案するとともに、重要案件で特命を受けて動くこともある。今回の尖閣問題では、対日強硬路線を提案、楊潔厶外相を押しのけるように前面に出て動いたのが戴国務委員だった。
 戴氏は中国の指導部のなかではきわめて特異的な存在だ。少数民族の土家族出身だからだ。土家族は湖南省、四川省などに住み、人口は約六百万人。戴氏自身は中国で最貧の貴州省出身で、四川大学でロシア語・・・