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政治

沖縄県民矛盾の構図

ジョージ・R・パッカード(米日財団理事長)

2010年5月号公開

 ―決着期限が迫る普天間問題の行方をどう見ていますか。

 パッカード グアムなど国外移転が望ましいのだろうが、難しいだろう。一方、これだけ地元の反対が表面化した以上、「辺野古案」はもはや現実的ではないばかりか、民主主義的にも良案とはいえなくなってしまった。仮に本土の住民にきいても、沖縄県民と同様、ほとんどの人は基地はあってほしくないと答えるに違いない。当然だ。徳之島の猛反対をみても、国民の本質はNIMBY(ニンビー)である。Not In My Back Yardの略で、核やごみ処理施設など都合の悪いものを他所に設置するのは良いが、自分の裏庭に設置するのは絶対に嫌だという人間の利己心を指す。

 ―日本政府は何を間違えたのでしょうか。

 パッカード 日本政府は本来、選挙民に国益上の観点から説得しなければならなかった。もともと沖縄県民は矛盾した考えを持っており、基地に反対する一方で、基地がないと経済的にやっていけない現実がある。沖縄県民の中でも基地があることで経済的に利益を得られる人は、表面では反対を声高に叫びながらも、本音では問題をすぐに終わらせたくない。長引かせることでより大きな利益が得られるからだ。そうした構図がある以上、事態の収拾は容易ではない。

 ―中国の軍事力という脅威も間近にあります。

 パッカード 多くの米国人もそれを懸念している。膨大な予算で軍備を増強する中国の意図が理解できない今は、東アジアの安全保障の観点からも日米同盟が必要であることは確かだ。ただし、ここで我々が注目しなければならない一つの問題は、八千人もの海兵隊が活動を開始する不測の事態とは何かということだ。四月十五日に上院委員会で日米関係に関する証言をした際、在沖縄海兵隊のミッションを質した。しかし、議会でも答えは得られなかった。海兵隊も今のところ答えを持っていないのだろう。つまり、基地の構造全体を再考する余地は米国側にもあるということだ。

 ―この問題にどのような解決の糸口がありますか。

 パッカード 幸い、両国間にはエリート層でも一般国民レベルでも歴史に裏打ちされた強い絆がある。だから、私は「賢者委員会」を提唱している。一九八〇年代に知識人や軍人、歴史家など各界の専門家が集まり、二国間のあらゆる問題をテーブルにのせて議論した経験がある。こうなった以上、普天間問題も、もっと大きな問題の一部として議論すべきだ。知日派、知米派が手を携え、この難局を乗り越えなければならない。ないとは信じたいが、もし対処を誤ると、いくら強い絆があるといっても、日米安保の終わりの始まりになる可能性はある。

 ―解決策はどうあるべきだと考えますか。

 パッカード エドウィン・ライシャワー元米国駐日大使は、かつて在日米軍が自衛隊のゲストとして日本の基地に配備される日が来るだろうと考えていた。それは彼独自の見方であるが、それが実現すると部分的に問題解決になるかもしれない。そうすると、米軍基地が沖縄からなくなる日はいずれ来るかもしれないが、それはいつになるのか分からない。二十五年先かもしれないし、五十年後、百年後になるかもしれない。


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