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連載

日本の科学アラカルト 54

「人類の敵」との終わりなき戦い ウイルス研究の取り組み

2015年2月号

「生物」の定義はなにか。古くは動物と植物だけが生物であるとされた。これに菌が加わり、菌はその成り立ちからもうすこし細かく分類されている。こうした生物と、石などの「無生物」を分ける要素はいくつかある。まず、生物は自ら増殖することができる。動物の生殖活動はもちろん、単細胞生物の分裂や、菌の無性生殖、有性生殖もこれに含まれる。また、生物は体内でエネルギー代謝を行って活動を維持する。  長年、議論が続けられてきたのが「ウイルス」だ。ウイルスは生物の細胞を利用する形ではあるが増殖することができる。またその際に遺伝子で自らのコピーを作っており、生物の生殖に通じる。このため、鉱物や水などの無生物と同様にみなすのは難しい。  一方で、ウイルスは代謝を行わず、寄生した細胞のエネルギーを利用することしかできない。さらに、すべての生物に共通している細胞を持たず、タンパク質で構成された「殻」とその内部に遺伝情報が書き込まれた「核酸」を持っているに過ぎない。  結果としてウイルスは生物ではないが、地球上で長く生物と共生してきた。ただ、我々人間にとってウイルスは敵であることがほとんどだ。今年も感・・・