三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

安倍外交「振付師」の実力

敏腕スピーチ・ライターの「功罪」

2015年6月号

 政治は言葉だ、という。一つの演説が歴史の転換点になることがある。良い方向にも悪い方向にも転がる。その言葉を巡り、対外発信を重視する総理大臣・安倍晋三を支える黒子の異能が、世界を危うい方向に導いているのではないかという不安が漂いつつある。  安倍の演説は、国内で反発を受けることも多いが、海外に向けた発信力では瞠目すべきものがある。英語力が高いとは言い難い安倍に力を与えているのは、世論操作に長けた「スピン・ドクター」である、内閣官房参与の谷口智彦と総理大臣政務秘書官の今井尚哉の二人だ。とりわけ、英語が堪能な谷口の役割は大きい。 外交官も舌を巻く英語力  海外で「歴史修正主義者」とも評される安倍の印象改善に貢献した、四月二十九日の米連邦議会での英語による演説「希望の同盟へ」で、米国人受けする言い回しや効果的な逸話を盛り込み、日本語と英語の語感の違いを利用して国内向けと海外向けにメッセージを使い分けた(例えば、罪に対する悔恨を意味する「repentance」を日本語では「深い悔悟」、良心の呵責「remorse」は「痛切な反省」として、英語では「罪」を強調し、日・・・