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経済

《企業研究》任天堂

「カリスマ喪失」後の深すぎる混迷と闇

2015年8月号

 新たな迷走劇のはじまりか、はたまた「終わり」のはじまりか―絶対的な司令塔を突然といった形で失い、任天堂が揺れに揺れている。大ヒット商品を連発させ、ゲーム業界の「カリスマ」的存在でもあった岩田聡社長が七月十一日、胆管腫瘍のため、京都市内の病院で死去したのだ。今年に入って、ディー・エヌ・エー(DeNA)とのスマートフォン(スマホ)向けゲーム分野での提携や、米ユニバーサル・パーク&リゾートとのテーマパーク事業での協業化を相次ぎまとめるなど、「復活と復権を賭けて新たな展開に踏み出そうとしていた」(周辺筋)矢先の死。有力な後継候補とみなされる人材にも乏しく、グループ関係者の間には先行きへの不安が広がる。

 岩田氏は一九九二年に和議を申請して経営破綻したゲーム開発会社、HAL研究所を再建した手腕とエンジニアとしてのセンスの良さを創業家の山内溥社長(当時)に見込まれて二〇〇〇年に任天堂入り。〇二年四十二歳の若さで社長に抜擢された。任天堂の快進撃はその直後から。〇四年暮れのクリスマス商戦に向けて投入した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」や〇六年に発売した家庭用(据え置き型)ゲー・・・