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米国はシリア内戦「恒久化」を望む

中東向け武器輸出で「ボロ儲け」の実態

2015年11月号

 南にイエメンの支配権をめぐるシーア派(フーシ派)勢力との戦いが泥沼化し、北にはロシアの介入で、これまで攻勢だったシリアのスンニ派武装組織が大打撃。スンニ派イスラム世界の盟主・サウジアラビアが直面しているそんな危機的状況を嘲笑うかのごとく、IMF(国際通貨基金)は冷酷な経済予測を発表した。二〇一五年の中東・北アフリカ地域の原油輸出総額は全体で三千六百億ドル(約四十三兆円)も減少するというのだ。中でも最大の産油国サウジはGDP比二一・六%(筆者試算では約十九・三兆円)という史上空前の歳入減を耐えなければならない。そして、その苦しみは現在一バレル当たり五十ドルを下回っている原油価格がV字回復を遂げない限り、今後何年も続く。  サウジ資本の汎アラブ紙「アルハヤート」のシャルベル編集長が「緩やかな死」と題する論説を書いたのは、そんな時である。今、中東で起きていることは、単に米国が引き揚げていった、その隙間をロシアが埋めた、といった単純な変化ではない。混乱はこれからも深まる一方で、曰く「当事者も外部勢力も中東を救うことができない状態(緩やかな死を待つ状態)」に陥ったというのである。 ・・・