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社会・文化

やはり「日本大敗」だったTPP交渉

「甘利のお手柄」は虚構にすぎず

2015年12月号

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意に達し、十一月十八日にフィリピンのマニラで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてTPP首脳会合も開かれた。上機嫌のオバマ大統領は「首相のリーダーシップで合意できたといってもよい」と安倍晋三首相を持ち上げた。首相の脇には感無量という表情で甘利明TPP担当相が同席した。  大筋合意以降、甘利担当相は在京紙や雑誌などのインタビューや講演会などに積極的に登場し、「怒鳴りました、机を叩きました」と自ら語っている。大筋合意に導いたのは日本の強硬姿勢だと言わんばかりだ。  かつての日本政府の通商交渉は、外務省、財務省、経済産業省、農林水産省、国土交通省などによるチームプレーであり、担当閣僚間で見解が異なると国内調整に手間取っていた。ホワイトハウス直轄の米通商代表部(USTR)と比べると、決断に時間がかかり、官僚が国益よりも省益を優先しようとする傾向も強かった。  この反省として安倍内閣では内閣官房に「TPP政府対策本部」を設置、甘利担当相が本部長となり官邸直轄の交渉団を組成した。担当相の下に財務省出身の佐々木豊成国・・・