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経済

鴻海と日本電産の「密かなる野望」

シャープを踏み台に「電気自動車」参入

2016年6月号

 ついに念願のシャープ買収を実現した鴻海(ホンハイ)精密工業会長の郭台銘(テリー・ゴウ)。六月末には三千八百八十八億円の払い込みを終えて経営権を握り、右腕の副総裁戴正呉を社長に送り込む。十五兆円企業のホンハイを一代で築いた男はシャープをどう再生するのか。そこにはエレクトロニクスの枠を遥かに超えた壮大な構想がある。
 四月のある日、突然、シャープの亀山工場に姿を現したテリー・ゴウは数百人の従業員を集め、二時間にわたって熱弁をふるった。はじめのうちは「シャープにどれほど期待しているか」という内容だったが、やがて話は幹部社員の外部流出に移り「大事な社員を引き抜く会社は許さない」と激昂。怒りの矛先を日本電産に向けた。
 五月一日付で、シャープの元最高財務責任者(CFO)大西徹夫が日本電産に移籍した。会長兼社長の永守重信は「株主総会後に、それなりの処遇をする」と語っており、大西を日本電産のCFOとして遇する可能性も取り沙汰されている。
 永守は二〇一四年にシャープ元社長の山幹雄を引き抜き、現在は代表取締役副会長兼最高技術責任者(CTO)に据えている。山と二人でシャー・・・