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連載

誤審のスポーツ史 17

サッカーにビデオ判定は必要か
中村計

2016年5月号

 メジャースポーツの中で唯一、映像判定の導入に消極的だったサッカー界がついに動いた。今年の三月六日、国際サッカー評議会(IFAB)が、ビデオ判定の試験的導入を決めたのだ。
 主審がリクエストすれば、ゴール、PK、レッドカードに関わるプレーなどをモニターで確認することができるという。早ければ来シーズンから試験が始まり、状況次第では二〇一八年のロシアW杯から正式採用される可能性もある。
 そもそもサッカーは、プレーが中断しても時間を止めない競技だ。そのため、アクチュアルプレーイングタイム、つまり九十分間の試合時間の中で実際にプレーしている時間をなるべく増やそうという考えがある。したがって、審判もむやみやたらとホイッスルを吹くのではなく、可能な限りスムーズに試合を流すことが求められる。その思想とビデオ判定という行為は馴染まないとされてきた。
 かといって、テクノロジーとまったく無縁だったわけではない。一二年から、ボールがゴールラインを割ったかどうかを判断するゴールラインテクノロジーを導入し、すでに多くの大会で利用されている。ゴールポストにセンサーを設け、ボールに・・・