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政治

《罪深きは この官僚》田中 豊 (金融庁法令等遵守調査室室長)

公益通報を握り潰した 「元判事」

2016年5月号

 「国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資する」
 二〇〇六年に施行された「公益通報者保護法」の第一条にはこの法律の目的が高らかに謳われている。企業の不正について、告発者が不利益を受けぬようにする法律であり別名は「内部告発者保護法」。これを受けて各省庁には通報の窓口が設置されたが、金融業界を広く監督する金融庁が公益通報についてあまりに杜撰な処理をしていることが明らかになった。
 本誌四月号で伝えたイオングループのカード会社「イオンクレジットサービス(CS)」での十年以上にわたる過剰請求問題。本誌への情報提供者の一人は、金融庁への公益通報も行っていた。三月上旬に資料を送付したが、同月二十五日付で公益通報として受理しないという決定を下したのだ。
 イオンCSは利用者に資金を貸し付けて利息を受け取る金融会社であるにもかかわらず、まともな利息システムさえ持たず過剰な利息を巻き上げていた。しかも、過去のシステムトラブルによるデータ損壊を隠蔽するために、利用者へ知らせる時期を遅らせて、大噓の対応マニュアルまで作っていたのだ。本来なら返却すべきカネを、請求・・・