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連載

BOOK REVIEWING GLOBE 384

水面下で激しさ増すサイバー交戦

2016年5月号


 オバマ時代は、サイバー戦争の幕開けを告げた時代として記憶されるだろう。二〇一〇年十月、米国は米サイバー軍司令部をフォート・ミード陸軍基地の国家安全保障局(NSA)に置いた。防衛予算が軒並み減少する中で、この分野の予算だけは飛躍的に増えた。この間、米政府のサイバー攻撃チームの陣容は、九百人から四千人に増えた。
 国防総省が、省内のコンピューターをハッキングする演習を初めて行ったのは一九九八年である。
 米軍のネットワークがどれほどサイバー攻撃に耐えられるかを試すため、NSAの専門家が真剣勝負で攻撃を仕掛けた。演習期間は二週間と定められたが、四日で終わった。それまでにすべての国防総省のネットワークがハッキングされてしまったのだ。
 〇八年十月、NSAは、一般のネットワークとは〝エア・ギャップ〟で隔離されているはずの国防総省のネットワークに誰かが侵入したことに気づいた。イラクとアフガニスタンを担当する中央司令部のネットワークに異変が起こったのだ。
 アフガニスタンの首都カブールの米軍基地近くのキオスクでマルウェアを埋め込んだメモリーチップ・・・