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社会・文化

人工知能で「再び敗戦」の日本産業界

「ロボット立国」は幻想にすぎず

2016年4月号

 グーグル傘下の英国の人工知能(AI)会社「ディープマインド」のソフトが、世界最強の囲碁名人を破ったことが注目される中で、日本の人工知能での遅れが目立っている。ハイテク各社がヒト型ロボット(ヒューマノイド)開発に集中した結果、ロボットの形ばかりが追求され、肝心の知能開発が進んでいないのだ。スマホや液晶テレビに続いて、日本の産業界は、AIでもガラパゴス化の悲劇を味わう危機に立たされている。
「思考能力」を重視した米国
 ディープマインドの快挙が世界中に伝わった三月中旬。日本でも、AI関連のイベントが相次ぎ、その存在がいよいよお茶の間にも広がった。
 その一つは、UEC杯コンピュータ囲碁大会。日本のソフト「ZEN」が、米フェイスブック社の「ダークフォレスト」を破って、二年ぶりに王座を奪還した。さらに三月下旬には、東京の電通本社で「人工知能は小説を書けるか?」と題したイベントが行われ、ニュース番組でも「そこまで行っているの?」と紹介された。
 一連のイベントで目についたのは、産業界の不在。米国のAI業界では、グーグル、・・・